特許広報(平成12年1月17日発行)より抜粋

特許番号 特許第3000438号
登録日 平成11年11月12日
出願番号 特願平8-212018
出願日 平成8年7月23日
公開番号 特開平10-33241
公開日 平成10年2月10日
審査請求日 平成9年11月20日
特許権者 高野 久
発明者 高野 久
代理人 弁理士 橋本 克彦
審査官 井上 哲男

【発明の名称】 ヘアウェーブ形成方法およびヘアウェーブ形成用器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】所定量の毛髪の先端を回転軸の先端に挟み部を有する毛髪固定クリップにより前記毛髪固定クリップをモータの駆動力により回転させて、前記毛髪を捻りながら巻き上げた後、定着処理を行うことを特徴とするヘアウェーブ形成方法。
【請求項2】請求項1記載の工程の後、毛髪の先端を挟んだ毛髪固定クリップを巻上時とは逆方向に回転させて、巻き上げた毛髪をほどくヘアウェーブ形成方法。
【請求項3】モータが内蔵された手持ち式の本体と、回転軸を介して前記モータと連結されて前記本体から先端方向へ突出して回転可能に設けられた毛髪固定クリップと、前記モータを起動させる起動スイッチとを有し、前記毛髪固定クリップは先端に滑り止めを有する挟み部が形成されていることを特徴とするヘアウェーブ形成用器具。
【請求項4】請求項3の構成に加えて、モータの回転方向を正逆反転させる逆転スイッチを設けたヘアウェーブ形成用器具。

【発明の簡単な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、毛髪をその長さ方向を軸として巻回させてウェーブを形成する方法、殊に細かいウェーブを作るのに適したウェーブの形成方法、およびそのときに用いるヘアウェーブ形成用器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、毛髪にウェーブを付ける際には、先ず、仕上がり状態に合った太さの棒状または筒状のロッドに取り分けた適量の毛髪を巻き付けた後、薬液や熱風等でウェーブを定着させるための処理を行い、その後、ロッドを外すという作業を行っている。
【0003】殊に、細かいウェーブを付ける場合には、細いロッドに極めて少量ずつの毛髪を巻き付けていかなければならないが、これを全毛髪について行うことは、極めて長時間且つ多大な労力がかかる作業であった。
【0004】また、アフロヘアのように長髪に縮れ毛状の細かいウェーブをつける場合、ロッドに毛髪を巻き付けると全体が均一なウェーブになり、不自然な仕上がりとなってしまうため、天然のアフロヘアの人のような自然な仕上がりを望む場合には、少量ずつの毛髪を手で捻って巻き上げる方法が行われていた。
【0005】そして、アフロヘアの場合には、巻き付けた毛髪にウェーブ定着処置を行った後、束にして巻き付けられた複数本の毛髪をほどいて一本ずつ独立させなければならない。
【0006】ところが、これら一連の作業をすべて手作業で行うと、極めて長時間且つ多大な労力がかかり、さらに、アフロヘアを編み込み等でまとめるドレッドヘアと呼ばれる髪型を作るには、数人が数日がかりで行わなければならなく、極めて大きな時間的、体力的な負担があった。
【0007】しかも、この方法を行うには熟練した技術が必要であり、技術者によって巻き方に違いが生じるため、技術者が異なると仕上がりに差が生じたり、更に、途中で技術者が替わると部分によって仕上がりが一定でなくなる、という問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、従来の毛髪の巻上方法では、殊に細かいウェーブを作る場合に、極めて多大な時間と労力とを要するうえに、自然なウェーブの髪型を作るのが困難であったり、担当技術者によって仕上がり状態が異なったりする、ということである。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は、所定量の毛髪の先端を回転軸の先端に挟み部を有する毛髪固定クリップにより前記回転軸が毛髪の長さ方向と合致する方向に挟むとともに、前記毛髪固定クリップをモータの駆動力により回転させて、前記毛髪を捻りながら巻き上げた後、定着処理を行ってウェーブを形成することとした。
【0010】この方法によると、細かいウェーブを作る場合でも簡単でしかも迅速に巻き上げ作業を行うことができ、さらに熟練技術を要することがないので、担当技術者による仕上がりの差もなくなる。
【0011】また、ウェーブ定着処置の後、巻上時とは逆方向に毛髪固定クリップを回転させて巻き上げた毛髪をほどくことによって、アフロヘア等のように巻き上げた束を一本ずつほどかなければならない作業も、迅速に行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】図1は本発明のヘアウェーブ用器具の好ましい実施の形態の一つを示すものであり、硬質合成樹脂により形成された筒状の本体1は、片手で握れる程度の太さおよび長さを有するとともに、外周面には、軸線方向あるいは周方向に滑り止めのために複数の溝22が設けられている。また、先端面の中心には回転軸3が突出配置され、本体1の内部に位置する回転軸3が突出配置され、本体1の内部に位置する回転軸3の基端は、逆転防止クラッチ4および減速器5を介して、直流式で正逆両方向に回転可能なモータ6に連結されている。
【0014】そして、回転軸3の先端には、毛髪固定クリップ2が、モータ6と連動して回転可能となるように、本体1の先端面から突出されて設けられている。この毛髪固定クリップ2は先端に例えば図1のようにかぎ鋸歯状に形成するか、好ましくは挟み部21の表面を鋸歯状に形成した合成ゴムなどの摩擦係数の大きい材質とすることによって、挟み部21に滑り止めが設けられている。
【0015】更に、モータ6には電源コード8が接続されており、その電源コード8は、本体1内に収装された逆転スイッチ7を介して本体1の基端面から外部へと延設されている。
【0016】電源コード8の先端にはプラグ11が設けられ、AC―DC変換器10を介してAC100Vのコンセント(図示せず)に接続される。そして、電源コード8の途中には、モータ6の起動をオン、オフ制御する足踏み式の起動スイッチ9が接続されている。
【0017】以下、図1に示した器具を用いて毛髪を巻き付けウェーブを形成する手順を図2および図3に基づいて説明する。
【0018】先ず、毛髪全体を湿らせて櫛でとかした後、図2(A)に示すように、所定量の毛髪31を頭皮30とほぼ垂直になるように伸ばし、その先端を毛髪固定クリップ2で挟む。このとき、回転軸3と毛髪の長さ方向とを同じ方向とした状態に挟む。
【0019】次に、起動スイッチ9をオン状態とし、毛髪固定クリップ2を回転軸3を中心として回転させ、毛髪31を捻りながら巻き上げていく。挟み部21は本体1の中心軸線上に位置しているので、毛髪固定クリップ2がぶれることなく回転し、毛髪31が緩みなく巻き上げられる。
【0020】起動スイッチ9は、図3に示すように足踏み式とされ、床に置いて足でオン、オフ制御することができるようにされている。従って、両手は専ら毛髪固定クリップ2に毛髪31を挟む作業に費やすことができるので、作業能率を大幅に向上させることができる。
【0021】そして、図2(B)のように、毛髪31が付け根から先端まで十分に巻き上がったら、起動スイッチ9をオフ状態にし、毛髪固定クリップ2を外して、別のクリップやゴム紐等からなる固定具等を用いて毛髪31の先端を固定し、巻き上げた状態に保持させる(図示せず)。異常の作業をすべての毛髪31が巻き上がるまで繰り返して行う。
【0022】尚、本実施の形態では、回転軸3に逆転防止クラッチ4が設けられていることによって、起動スイッチ9を切ると同時に毛髪固定クリップ2も停止するので、モータ6の慣性力による過剰の巻き上げが防止されるとともに、巻き上げた毛髪の反転力によってモータ6が逆回転して、巻き上げた毛髪が緩むことが防止されるようになっている。また、減速器5が設けられていることによって、モータの回転が毛髪の巻き上げに適した回転速度に変換されている。更に、電気式または機械式の変速機を設けて、回転速度を複数の段階に切り替え可能とし、毛髪の量やウェーブの種類などによって使い分けるようにすることも可能である。
【0023】そして、全て毛髪31が巻き上がったら、バーマネントウェーブ用やセット用などの薬液を塗布し、ときには熱風等を加えながら、ウェーブ定着のための処理を行う。
【0024】ウェーブの定着処置が終了したら、固定具を外し、再び毛髪固定クリップ2で毛髪31の先端を挟み、逆転スイッチ7を切り替えて、巻上時とは反対方向にモータ6を回転させて巻き上げた毛髪をほどく。逆転スイッチ7は、本体1に設けられているので、回転方向の切り替えは手元で行われることなり、従って、正しい方向に回転することを常にめで確認しながら操作することができる。
【0025】最後に、必要であれば毛髪31に付着している薬液を洗い流し、適宜乾燥させて櫛を通し、髪型を整えてウェーブを仕上げる。
【0026】以上の工程において、一度に毛髪固定クリップ2で挟む毛髪の量を多くすれば緩いウェーブに、少なくすれば細かいウェーブに仕上げることができる。
【0027】尚、前記の実施の形態においては、電源を屋内に配置されているAC100Vのコンセントから採ることとしたが、電池式としてもよい。この場合は、電源コード8が捩れないように注意する等の煩わしさがなく操作性に優れるうえ、使用後に長尺のコード8を巻き取るなどの面倒な片付けをする必要がなく、また、保管上も便利である。
【0028】また、起動スイッチ9を本体1に設け、手元で操作するようにしてもよく、この場合には、起動スイッチ9を操作するために本体1を握り換えなくてもよいように、通常使用時の位置で握ったときに指が届く位置に設けられることが好ましい。
【0029】そして、このとき、例えば高速回転と低速回転のように、複数種類の回転速度についてそれぞれON、OFFスイッチを設けておけば、いずれかのスイッチを操作するだけで、変速操作をすることなく状況に応じた速度で巻き上げることができ、便利である。
【0030】
【発明の効果】本発明によると、ロッドを用いないで、モータの回転を利用して電動で毛髪を長さ方向を軸線として捻りながら巻き上げるため、毛髪を簡単且つ迅速に極めて細かい径で巻き上げることができ、アフロヘアやドレッドヘアのような極めて細かいウェーブ作成に要する時間を大幅に短縮することができるので、時間および労力の面での負担が少なくなる。
【0031】しかも、熟練技術を要しないので、担当技術者によるウェーブの仕上がりに差が生じることがない。
【0032】また、巻き上げた毛髪の束を巻上時とは逆方向に回転させてほどくことも電動で行う場合には、アフロヘア等の仕上げも迅速に行うことができる。
【0033】殊に、ロッドを使用せずに巻き上げるので、ウェーブの大きさが揃いすぎて不自然になることがなく、自然な髪型に仕上げることができる。
【0034】そして、ロッドを使用しないので、ウェーブの定着処置中に余分な荷重が頭皮にかかることがなく、頭皮への負担が少ない。
【0035】更に、ロッドの保管や保守の必要もないので、後片付けの手間も少なくなるうえ、省スペースとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヘアウェーブ用器具の実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明のヘアウェーブ形成方法を示す説明図である。
【図3】図1の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 本体
2 毛髪固定クリップ
3 回転軸
6 モータ
7 逆転スイッチ
9 起動スイッチ
30 頭皮
31 毛髪

(図3は略)

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